挨拶

◆御挨拶 ~災害多発時代に活躍できる歯科医療人育成に向けて~

九州大学大学院歯学研究院 研究院長 中村 誠司

1995 年の阪神・淡路大震災以降、日本では毎年のように大規模自然災害が発生し、災害多 発時代に突入したといわれています。現代社会で生活する我々は地球温暖化が進行する中で、地震や水害、そして感染症拡大のパンデミックなど、いつでも、どこでも、誰でも災害に遭遇する可能性が高くなっています。この災害多発時代を生き抜くために、ユビキタスな減災社会を構築する必要があり、歯科医療者もその中の役割の一つを担わなければなりません。

九州地区でも大規模自然災害を通して、災害時の医療では被災者・避難者への直接的な医 療だけでは災害関連死を防ぐことができないことを経験しました。公衆衛生及び保健福祉に 渡る災害医療の実践が必要であり、歯科医療者が医師や看護師の他、行政の福祉保健担当者、保健師、セラピスト、栄養士などと連携・協働した、要配慮者に対する「食」を基盤と した健康支援、虚弱予防、口腔機能管理が災害関連死予防に期待されました。また、昨今のコロナ禍による長期自粛生活に伴う生活不活発病予防にも歯科医療への期待が注がれています。一方、今後起こりうる南海トラフ巨大地震では、残念ながら九州地区でも多数の犠牲者が想定されています。不幸にして亡くなった方々の御遺体を御遺族の元に間違いなく一刻も早くお返しする人間の尊厳を守る役割も歯科医師に求められています。

この度、新型コロナ感染症の蔓延も重なったこのタイミングで、熊本大学病院を主幹校と する文部科学省 課題解決型高度医療人養成プログラム(事業名:多職種連携の災害医療を 担う高度医療人養成)と連携して、本シンポジウムを開催させて頂くこととなりました。 本来であれば博多に皆様をお招きし、御講演して頂きたかったところでございますが、コロ ナ感染対策の観点から、Web 開催とさせていただきます。この大変な時期に御講演いただき ます、日本歯科医師会 小玉 剛常務理事、奥羽大学歯学部生体構造学講座法歯学 花岡洋一教授をはじめ、福岡県歯科医師会、福岡県歯科衛生士会、福岡県歯科技工士会、さらには連携大学及び協力施設の先生方に心より感謝申し上げます。また、このコロナ禍の時期だからこそ、これからの災害歯科口腔医療が発展し、災害多発社会に大きく貢献できるように、皆様とともに邁進していくことを祈念いたしまして、本シンポジウム開催の御挨拶とさせて頂きます。

◆事業責任者挨拶

熊本大学病院 病院長 谷原 秀信
平素より、熊本大学病院へのご支援、ご協力をいただいておりますことに厚く御礼申し上げます。

さて、熊本大学病院災害医療教育研究センターは、平成28年熊本地震の被災県としての災害対応の経験を活かし、災害医学に関する教育や研究を推進するセンターとして、平成3 0年10月1日付けで、熊本大学病院に新たに設置されました。災害医療に従事する人材の養成、行政や地域医療との連携、市民への防災教育等を行うことにより、災害時における災害医療提供体制の構築を図ることを目的としています。

事業として、高度災害医療人材の養成、災害医療の研究、地域住民への啓発等を掲げておりますが、当センターの事業の柱である、高度医療人材養成につきましては、平成30年度文部科学省「課題解決型高度医療人材養成プログラム」に九州大学大学院歯学研究院と連携して応募し採択されました。災害関連死の防止に効果のある口腔機能管理が重要視される中、熊本大学病院と災害医療支援実績を持つ九州大学大学院歯学研究院が連携してプログラムを推進していくことに大きな独創性があり、今後の災害医療支援体制のモデルとして構築されることを期待しております。

人材養成プログラムは、Eラーニング等も活用しながら、講義や実習、訓練等を実施しておりますが、受講生以外の医療従事者や市民の皆様に対しても、研修会や公開講座を開催し、昨年度は、全体で800名近いご参加をいただきました。熊本大学病院が有する災害医療の情報やノウハウを地域にフィードバックすることも使命の一つであり、引き続き、地域社会に対する責任を果たして参りたいと考えております。
我々の取組みが、大規模な自然災害にも耐えうる強力な地となり、安全安心の地域医療と防災体制のネットワークが守られ、人と人との絆が守られる素晴らしい故郷となることを祈念して私の挨拶といたします。